清澤のコメント:薬剤性眼瞼痙攣と考えられる患者さんにジスバル(バルベナジントシル酸塩カプセル)という薬剤のことを聞かれました。遅発性ジスキネジアに対する治療薬で、比較的新しく国内での処方がなされるようになった薬剤です。遅発性ジスキネジアの診断及び治療に精通した医師のもとで、本剤の投与が適切と判断される症例に使用すること(保医発0524第3号:令和4年5月24日付)とされておりますので、私はまだこの薬剤の処方は致しません。
医療用医薬品 : ジスバル
製剤名 | バルベナジントシル酸塩カプセル |
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薬効分類名 |
VMAT2阻害剤 |
2. 禁忌
次の患者には投与しないこと
2.1 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
2.2 先天性QT延長症候群又はTorsades de pointesの既往のある患者[QT間隔の過度な延長、心室頻拍(Torsades de pointesを含む)を起こすおそれがある。]
4. 効能または効果:遅発性ジスキネジア
5. 効能または効果に関連する注意
遅発性ジスキネジアと診断された患者※に使用すること。
※米国精神医学会の「精神疾患の診断・統計マニュアル第5版(DSM-5;Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders,Fifth Edition)」及び米国精神医学会の「統合失調症治療ガイドライン第3版」を参考にすること。
6. 用法及び用量
通常、成人にはバルベナジンとして1日1回40mgを経口投与する。なお、症状により適宜増減するが、1日1回80mgを超えないこととする。
7. 用法及び用量に関連する注意:略
8. 重要な基本的注意
8.1 遅発性ジスキネジアは、抗精神病薬の長期使用に関連して発現するとされているため、原因薬剤の減量又は中止を検討すること。ただし、原因薬剤を減量又は中止した場合に、精神症状の増悪や再発に繋がるおそれがあるため、慎重に判断すること。(以下略)
9. 特定の背景を有する患者に関する注意
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 遺伝的にCYP2D6の活性が欠損していることが判明している患者
9.1.2 QT延長を起こしやすい患者(著明な徐脈等の不整脈又はその既往のある患者、うっ血性心不全の患者、低カリウム血症又は低マグネシウム血症のある患者)
9.1.3 自殺念慮又は自殺企図の既往のある患者、自殺念慮のある患者
9.1.4 脱水・栄養不良状態等を伴う身体的疲弊のある患者
9.3 肝機能障害患者
9.5 妊婦
9.6 授乳婦
9.7 小児等
10. 相互作用:略
11. 副作用
11.1 重大な副作用
11.1.1 傾眠、鎮静
11.1.2 重篤な過敏症
11.1.3 錐体外路障害
11.1.4 悪性症候群(頻度不明)
11.2 その他の副作用
18. 薬効薬理
18.1 作用機序
遅発性ジスキネジアの病態生理に関する詳細は不明であるが、脳内線条体におけるシナプス後のドパミン(DA)過感受性等が考えられている。バルベナジン及びその活性代謝物である[+]-α-ジヒドロテトラベナジン([+]-α-DHTBZ)は、中枢神経系の前シナプスにおいて、モノアミン(DA等)の貯蔵及び遊離のために、細胞質からシナプス小胞へのモノアミンの取込みを制御している小胞モノアミントランスポーター2(VMAT2)を選択的に阻害する。その結果、遅発性ジスキネジアに対する治療効果を発揮すると考えられる。
18.2 VMAT2阻害作用
バルベナジン及びその活性代謝物である[+]-α-DHTBZは、ヒトVMAT2を阻害し、その作用は[+]-α-DHTBZの方が約45倍強かった(in vitro)。また、ラットにおいて、バルベナジン及び[+]-α-DHTBZは、神経終末におけるDA及び/又はノルエピネフリンの遊離量減少によって生じる眼瞼下垂、自発運動量減少及び血中プロラクチン値上昇を引き起こした。
25. 保険給付上の注意
25.1 本剤は新医薬品であるため、厚生労働省告示第97号(平成20年3月19日付)に基づき、2023年5月末日までは、1回14日分を限度として投薬すること。
25.2 本製剤の効能・効果に関連する注意において「遅発性ジスキネジアと診断された患者に使用すること。」とされていることから、遅発性ジスキネジアの診断及び治療に精通した医師のもとで、本剤の投与が適切と判断される症例に使用すること(保医発0524第3号:令和4年5月24日付)。
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