全身病と眼

[No.281] 多発血管炎性肉芽腫症(GPA:granulomatosis with polyangiitis)のリツキシマブ治療とは

清澤のコメント:Willis眼科病院のチーフラウンドをネットで見ました。今日の話題は多発血管炎性肉芽腫症(注1:GPA:granulomatosis with polyangiitis)、旧称:ヴェゲナー肉芽腫症)に対してリツキシマブを使うというお話でした。ヴェゲナー肉芽腫症は、眼科では鼻腔や眼窩に壊死性の血管炎を示す疾患で治療に困難を伴うものとして知られてきましたが、多発血管炎性肉芽腫症は肺炎などが有名で、眼科にも膠原病内科から紹介されてみることがあります。

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ヒトCD20はヒトリンパ球B細胞のみに発現し、正常・腫瘍細胞は問わず、preB~成熟B細胞にかけて細胞膜表面に認められます。ヒトCD20に対する抗体をヒトは持たないため、マウスのヒトCD20に対する抗体の可変領域Fabとヒト定常領域Fcをキメラとして、1991年米国のIDEC Pharmaceuticals社がリツキシマブを創製しました。日本での健康保険適応は、CD20陽性のB細胞性非ホジキンリンパ腫、免疫抑制状態下のCD20陽性のB細胞性リンパ増殖性疾患、多発血管炎性肉芽腫症、顕微鏡的多発血管炎です。非ホジキンリンパ腫、リンパ増殖性疾患の治療では単独での使用も行われるが、CHOP療法との併用も行われています。

リツキシマブはANCA関連血管炎に対する治療薬のひとつで、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症でも効果がみられています。

適応

CD20陽性の非ホジキンリンパ腫 (NHL)/CD20陽性の慢性リンパ性白血病 (CLL)/免疫抑制状態下のCD20陽性のB細胞性リンパ増殖性疾患/多発血管炎性肉芽腫症(GPA、旧称:ヴェゲナー肉芽腫症 (Wegener’s granulomatosis))

◎多発血管炎性肉芽腫症(GPA)とは

以前はウェゲナー肉芽腫症と称されていた疾患で、「気道に起こる炎症性肉芽腫かつ小~中血管に起こる壊死性血管炎である」と定義されています。眼、耳、鼻、喉などの上気道炎を初発として、気管、肺などの下気道および腎障害をきたしてくる疾患です。病気の原因は不明で、遺伝性はいわれていません。推定発症年齢は男性が30~60歳代、女性が50~60歳代、性差はいわれていません。

症状・検査

発熱、体重減少、易疲労感、筋痛、関節痛などの全身症状とともに、(1)上気道の症状(膿性鼻漏、鼻出血、難聴、耳漏、耳痛、視力低下、眼充血、眼痛、眼球突出、咽喉頭痛、 嗄声 など)、(2)肺症状(血痰、 咳嗽 、呼吸困難など)、(3)腎症状(血尿、乏尿、浮腫など)、(4)その他の血管炎を思わせる症状(紫斑、多発関節痛、多発神経炎など)が起こりる。通常は、(1)→(2)→(3)の順序で起こることが多いですが、順番通りではなく、人によってでてくる症状、障害される臓器が違います。検査所見は、炎症反応の上昇(CRP高値、白血球数増加、赤沈亢進)があります。自己抗体としてはPR3-ANCAまたはMPO-ANCAの検出ですが、欧米ではPR3-ANCA陽性が多いのに比し、本邦ではMPO-ANCA陽性が約半数以上みられます。

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チャーグストラウス症候群は好酸球性あるいはアレルギー性と付きますが類似疾患のようですので再録しておきます。

https://www.kiyosawa.or.jp/uncategorized/38069.html/

  • The-Disease-Called-Churg-Strauss-Syndromeアレルギー性肉芽腫性血管炎(チャーグ・ストラウス症候群)この疾患はアレルギー性肉芽腫性血管炎のことで、別名をチャーグ・ストラウス症候群と言います。アレルギー性肉芽腫性血管炎とは、全身の動脈に血管炎がおこる病気で、肺動脈もおかし、気管支喘息をひきおこします。アレルギー性肉芽腫性血管炎(チャーグ・ストラウス症候群)の症状には、喘息発作、手足のしびれ、青あざ、関節痛、筋肉痛、腹痛、体重減少、発熱などの症状があらわれます。この疾患にはどんな目の症状があるのでしょうか?まず眼窩の炎症症状があり得ます。
    瀰漫性の炎症があった症例の報告では、50mgのプレドニソロンで良好にコントロールがなされ2週間できることが出来ました。この症例は7年後に反対側の涙腺に炎症を起こしましたが、これも良好に治療されました。この時にはChurg-Strauss症候群と診断されました。

    Churg-Strauss症候群の患者には眼窩炎症のほか、神経眼科的な血管炎が網膜、脈絡膜、視神経、そして眼球運動神経にも炎症が見られることがあります。
    上図は別のページに出ていた強膜炎の写真です(出典)

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    清澤のコメント:
    チャーグ・シュトラウス症候群という診断の付いた患者さんが神経眼科外来にやって見えたので、今日はこの疾患をおさらいしてみました。臨床的にはウエジェナー肉芽種とも近い概念のようですね。ステロイドの使用でうまくコントロールされるとよいですね。

    歴史: Churg J, Strauss L. Allergic granulomatosis, allergic angitis and periarteritis nodosa Am J Pathol1951; 27:277-94 磐田市民病院のページから借用

    ChurgStrauss

    最後に、アレルギー性肉芽腫性血管炎(Churg-Strauss症候群)の診断基準 (厚生省 難治性血管炎分科会、1998年修正案)をご参考までにここに引用しておきます。

    <概念>
    Churg-Straussが古典的PNより分離独立させた血管炎であり気管支喘息、好酸球増加、血管炎による症状を示すものをChurg-Strauss症候群、典型的組織所見を伴うものをアレルギー性肉芽腫性血管炎とする。

    診断基準

    1.主要臨床所見
    (1)気管支喘息あるいはアレルギー性鼻炎

    (2)好酸球増加

    (3)血管炎による症状〔発熱(38℃以上、2週間以上)、体重減少(6か月以内に6kg以上)、多発性単神経炎、消化管出血、紫斑、多関節痛(炎)、筋肉痛、筋力低下〕

    2.臨床経過の特徴

    主要所見(1)、(2)が先行し、(3)が発症する。

    3.主要組織所見

    (1)周囲組織に著明な好酸球浸潤を伴う細小血管の肉芽腫性、またはフィブリノイド壊死性血管炎の存在

    (2)血管外肉芽腫の存在

    4.判定
    (1)確実(definite)

    (a)主要臨床所見のうち気管支喘息あるいはアレルギー性鼻炎、好酸球増加および血管炎による症状のそれぞれ一つ以上を示し同時に、主要組織所見の1項目を満たす場合(アレルギー性肉芽腫性血管炎)

    (b)主要臨床所見3項目を満たし、臨床経過の特徴を示した場合(Churg-Strauss症候群)

    (2)疑い(probable)

    (a)主要臨床所見1項目および主要組織所見の1項目を満たす場合(アレルギー性肉芽腫性血管炎)

    (b)主要臨床所見3項目を満たすが、臨床経過の特徴を示さない場合(Churg-Strauss症候群)

    5.参考となる検査所見
    (1)白血球増加(1万/uL)
    (2)血小板数増加(40万/uL)
    (3)血清IgE増加(600U/mL 以上)
    (4)MPO-ANCA陽性
    (5)リウマトイド因子陽性
    (6)肺浸潤陰影

    (これらの検査所見はすべての例に認められるとは限らない)

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