清澤のコメント:平松類先生の眼球破裂というネット記事が出ていました。私もこのテーマの記事を加筆修正しておきます。
眼球破裂という眼外傷のことが話題になっています。◎ 眼球破裂とは? Ruptered Globe輪部における眼球破裂。
鈍的で打撃的な眼球打撲では眼球には2か所の破裂しやすいところがあります。最も明らかなのは角膜周辺の輪部と呼ばれるところです。この部分の破裂ならば外傷は最も明白です。ブドウ膜ないし虹彩組織が傷から赤ないし黒くはみ出しています。結膜を外して強膜を縫って暗い尾を当てればよいので手術は比較的容易です。直筋の付着部での破裂:他の破裂しやすいところは直筋の付着部の後方です。強膜はこの部分が最も薄く、破裂しやすいのです。この部分には接近することがはるかにむつかしく、時には術中に直筋を外して強膜を縫い、外した直筋を戻してから結膜も縫う必要があります。眼球破裂が疑われる眼球では:
輪部は正常で眼球破裂が疑われる場合には、筋の下を開けてみなくては眼球破裂が見つからないことがあります。 (上図)
◎眼球破裂の治療方法は?
以下が、大学病院で眼球破裂の処置を担当したことのある私の眼球破裂の手術方法の基礎的知識です。ここ数年で、私が知らない中でも、さらに進歩した部分もあるでしょうけれど。このビデオは最も軽い部類の手術ビデオでユーチューブに出ていたものです。このビデオでは硝子体には手を加えてはいません。このような外傷では圧迫しないようにカバーして手術のできる病院に送ります。東京ドームならば、東京医科歯科大学へも打球が観客の目を直撃したという例がたまに運ばれて来ていました。
角膜や強膜を貫通する裂傷ができなければ単に眼球打撲であって、眼球破裂とは呼びませんからもしその診断がついたならば、これはもっと激しい眼球の内部が外部につながってしまった外傷でしょう。大学病院ないしそれに準ずる手術のできる病院に救急搬送が必要です。
①まず、手術には局所麻酔では不足で、全身麻酔が必要でしょう。
②もし本当に眼球破裂なら眼球外に押し出されてしまった水晶体や毛様体などの組織は元に戻すことを断念して眼球内外の境目で外に出たものは切除します。引き出してはいけません。
③多くの場合眼球外膜の裂傷は角膜と強膜の境目あたりで、角膜輪部と平行にできています。結膜を破裂部位近くで、はさみで切って開いて、強膜ないし角膜の断裂創をナイロン糸で一つづつ縫い合わせてゆきます。
④このときに傷の周りには網膜剥離拡大の予防のために冷凍凝固斑(クライオ)を置きます。
⓹必要と思えばシリコンバンドでバックリングという縫い付け物を置きます。
⑥眼底が見えない硝子体出血を伴っていれば、必要に応じて硝子体切除を行って網膜剥離を確認します。眼内光凝固を置くことも考えます。
⑦網膜剥離があって、さらに必要ならば硝子体をガスに置換して網膜剥離の広がりを止める必要もあるでしょう。
⑧次回の術後眼底検査は翌日の朝に行います。
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この話題の素となった事件は:
沖縄県警「警察官をかばうつもりは全くない」 高校生失明で初のコメント 署への投石も捜査
入院中の高校生の右目付近には細長いあざが確認できる。1月27日に家族が撮影した(画像を加工しています)
1月27日未明に沖縄県沖縄市宮里の路上でバイクを運転していた男子高校生(17)と暴走行為警戒中だった巡査の男性警察官(29)が接触、高校生の右眼球が破裂し失明した事案で、県警捜査1課は3日、発生から1週間たって初めてコメントを発表した。「非常に重大と認識している」「警察官をかばうつもりは全くない」と述べた。警察官から状況を聞いたが高校生からは聞けておらず、回復を待っている。 【動画】インスタやツイッターで瞬く間に拡散 若者300人、沖縄署を取り囲む 入院中の高校生の母親は県警の対応に「なぜ初動捜査の段階で重大事案として受け止めなかったのか。抗議がなければ、報道がなければ、単なる事故として処理されていたのではないか」と疑義を呈した。 「私たちは(高校生が訴えるように)『警察官に殴られたのではないか』と一貫して主張していて、それは変わらない」とも話した。 県警によると事案発生は1月27日午前1時15分ごろ。 住宅街の路地を徒歩で巡回していた男性警察官が、対向から来たバイクの運転手に職務質問しようと両手を上げて停止を求めたという。バイクが止まらなかったため、警棒を持った状態で手を伸ばし、バイクを制止しようとして強くぶつかったと説明する。 警察官は県警の調査に「一瞬のことでどこが高校生に当たったのか分からない」と話しており、相手にけがをさせた認識はなかったという。接触後、巡回業務に戻り、同僚にも伝えていなかった。 一方、バイクを運転していた高校生は自ら119番通報し、救急隊員や母親に「急に現れた警察官に右側から棒のようなもので殴られた」と話した。停止を求められた覚えもないと証言しているという。 県警は当時警察官が着ていた制服と、手に持っていた警棒の鑑定を進める。目撃情報や防犯カメラの映像は確認されていない。 捜査1課の東濵貴大次席は「(事実関係は)予断を持って答えられない」としつつ、「警察官に非があれば厳正に対処する」とコメントした。 沖縄署への投石などによる器物損壊容疑についても捜査を進めている。
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