コンタクトレンズ・眼鏡処方

[No.3925] 小児の近視進行を抑える3つの方法とその理由

小児の近視進行を抑える3つの方法とその理由

近年、日本を含むアジア諸国では小児の近視が急増しており、大きな社会的課題となっています。特に学齢期の子どもたちは近視が進みやすく、放置すると将来「強度近視」へ進行し、網膜剥離や緑内障など重い眼の病気のリスクが高まります。そこで、科学的に有効と認められている3つの近視進行予防法について、わかりやすく説明します


① 一日2時間の屋外活動

屋外で過ごす時間が長い子どもは、近視になりにくいことが世界中の研究で示されています。特に1日2時間以上の屋外活動が推奨されます。

なぜ外で遊ぶと近視が進みにくいのでしょうか?

  • 屋外の明るい光を浴びることで、網膜から「ドーパミン」という物質が分泌されます。これは眼軸(目の奥行き)が伸びるのを抑える働きを持ち、結果として近視の進行を防ぐと考えられています。

  • また、外遊びでは遠くを見る機会が多く、室内でタブレットや本を長時間近くで見る「近業」に比べて、眼に負担がかかりにくいのです。

つまり、毎日の生活の中で外で元気に遊ぶこと自体が、子どもの眼を守る自然な「薬」と言えるでしょう。


② 低濃度アトロピン点眼(0.025%)

「アトロピン」という薬は、もともと散瞳薬(瞳を広げる薬)として使われてきましたが、低い濃度で毎日点眼すると、近視進行を抑える効果があることがわかってきました。特に**0.025%**程度の低濃度では、副作用が少なく効果と安全性のバランスが良いとされています。

その仕組みは完全には解明されていませんが、次のように考えられています:

  • 網膜や脈絡膜に作用して、眼球の奥行きが伸びるのを抑制する。

  • 調節(ピント合わせ)に関わる毛様体筋の過剰な働きを抑え、眼の負担を軽減する。

臨床試験でも、何もしない子どもに比べて近視の進行速度を30〜60%程度遅らせる効果が報告されています。夜寝る前に一滴点眼するだけなので、日常生活に取り入れやすい方法です。


③ オルソケラトロジー(角膜矯正コンタクトレンズ)

オルソケラトロジーとは、寝ている間に特殊なデザインのハードコンタクトレンズを装用し、角膜の形を少しだけ平らにして、日中は裸眼で生活できるようにする治療法です。近視矯正だけでなく、近視進行を抑える効果があることが注目されています。

その理由は:

  • レンズによって角膜が矯正されると、網膜の周辺部に「焦点が網膜の手前に結ぶ」状態(周辺網膜への近視性デフォーカス)が作られます。

  • この光学的な刺激が眼軸の伸びを抑える信号として働き、近視進行を防ぐと考えられています。

国内外の研究で、オルソケラトロジーを使用している子どもは、眼軸の伸びが30〜50%程度抑えられることが示されています。ただし、コンタクトレンズの装用管理や定期検診が必要であり、保護者の協力も欠かせません。


まとめ

子どもの近視進行を抑えるには、

  1. 毎日2時間の屋外活動で自然な光を浴びる

  2. 低濃度アトロピン点眼で薬理的に眼軸伸長を抑える

  3. オルソケラトロジーで光学的に進行をコントロールする

この3つの方法が科学的に有効と認められています。それぞれの効果の仕組みは異なりますが、いずれも「眼球の奥行き(眼軸長)が伸びすぎるのを防ぐ」ことが共通点です。

子どもたちの未来の視力を守るために、生活習慣の工夫と医学的な対策を組み合わせて取り入れることが大切です。

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