以下は、日本の眼科に採録されていた学校医連絡協議会で行われた「小児眼科診療について」の教育講演(国立成育医療研究センター眼科林思音先生)の概要と記録から抜粋した要旨です。大変参考になりますのでご一読ください。
1,3歳に検診における精密検査の目的:
- 精密検査の目的: 弱視の発見と原因検索であり、弱視の可能性がある場合は網羅的な検査が必要です。
2,弱視の分類
- 弱視の分類: 屈折異常、不同視、斜視、形態覚遮断の4つに分類され、それぞれの原因に基づいて治療が行われます。
- 治療と予後: 特に重篤な弱視は治療が困難であり、早期発見と適切な治療が予後に大きく影響します。
3,フォトスクリーナーの評価:
- 屈折異常判定: スポットビジョンスクリーナーを用いた研究では、弱視検出の感度は高いが特異度は低い。フォトスクリーナーは調節の介入が少ないが、自然瞳孔下では正確でないため、精密検査が必要。
- 斜視判定: 斜視の異常判定の感度と特異度は高いが、撮影条件が悪いと偽陽性になることがある。内斜視では遠視評価が重要で、眼鏡処方は乳児と幼児で基準が異なる。
- 検査不能: 強い屈折異常や器質的疾患があるとフォトスクリーナーで計測できない。検査が終了しない場合は器質的疾患の存在を疑う。
4,弱視の治療
- 眼鏡処方: 弱視のある患者には、まず調節麻痺下の屈折値に基づいて眼鏡を処方し、鮮明な視像を得る。
- 治療効果: 米国の研究によると、眼鏡装用により中等度不同視弱視の77%が視力改善、斜視弱視の75%が改善を示した。
- 眼鏡装用の確認: 処方後2〜3ヶ月で眼鏡の適合性と装用状況を確認し、必要に応じて弱視訓練を行う。
5,診察困難症例への対応
- 神経発達症: 自閉症スペクトラムや注意欠如・多動症などの増加傾向にある神経発達症に対し、眼科的評価が重要。
- 視機能障害: ASD患者は正常発達児に比べて眼科的疾患が多く、視知覚特性の評価が必要。
- 診察の工夫: 診察が困難な場合は他覚的検査を優先し、屈折異常が疑われる場合は眼鏡を処方する。
――資料―――
表 1 精密検査受診勧告の基準(URL 1 から引用)
1)視診にて異常所見がある
2)固視の異常がある
3)斜視がある,あるいはその疑いがある
4)眼球運動異常がある
5)問診票に 1 つでも該当項目がある
6)二次検査で視力の再検査を実施した結果,左右いずれかでも視力が 0.5 に満たないもしくは検査不能
7)屈折検査を導入している場合
a.異常判定基準に該当する
b.検査ができない
c.検査に協力的でも測定不能
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表2:乳幼児の屈折矯正ガイドライン
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