清澤のコメント:日本の眼科8月号のテーマは中心性漿液性脈絡膜祥の坤為地の考え方と治療で、「CSCの今日の考え方 総説 丸子一朗、飯田知弘(東京女子医大眼科)」がそのメイン記事として掲載されています。本文6ページの長い総説を短縮して、しかも具体的内容を残して採録します。
要約:中心性漿液性脈絡網膜症(CSC)は、30-40 代の男性に多く、黄斑部を中心に漿液性網膜制離が生じる疾患である。原因はストレスやステロイド使用などが考えられているが、完全には解明されていない。造影検査や光干渉断層計による脈絡膜の描出技術の進歩がその病態理解に大きく寄与しており、脈絡膜の肥厚や血管拡張が特徴であることがわかってきた。パキコロイド疾患との関連も注目されており、CSC を理解するには黄斑だけでなく、眼球全体の血流動態まで広い視点を持って評価する必要がある。
ーーーこの本文を章ごとに抄出します。ーーー
はじめに CSCは30-40代の男性に多く発症し、黄斑部に漿液性網膜剥離を引き起こす疾患で、ストレスやステロイドの使用が原因とされているが、完全には解明されていません。日本の調査では男性の発症率が高く、CSCは比較的頻度の高い疾患です。
Ⅰ.インドシアニングリーン蛍光眼底造影とCSC FAでは網膜色素上皮の機能異常が原因と考えられていましたが、ICGAにより脈絡膜の血管異常が主要な原因であることが示されました。脈絡膜血管の透過性亢進がCSCの発症に関与し、対側眼にも同様の異常が見られることがあります。
Ⅱ.脈絡膜厚測定とCSC 脈絡膜の厚さはCSC患者で肥厚しており、OCTを用いた脈絡膜の観察が普及しました。PDT後には脈絡膜が薄くなることが示され、PDTがCSCの原因である脈絡膜血管異常に直接作用している可能性が示唆されます。
Ⅲ.脈絡膜層別解析とCSC 脈絡膜の内部構造に注目した研究では、CSC患者では脈絡膜の間質領域が増加し、PDTにより間質領域よりも管腔領域が減少することが確認されました。
Ⅳ.脈絡膜en face OCTとCSC en face OCTは脈絡膜を立体的に評価する技術で、CSC患者では脈絡膜管腔密度が高く、血管の走行パターンにも異常が見られることが示されています。
Ⅴ.超広角インドシアニングリーン蛍光眼底造影とCSC 超広角ICGAでは、CSCの脈絡膜血管異常が眼底全体にわたり見られることが示され、全眼球的な評価が必要である可能性が示唆されています。
Ⅵ.(超)広角OCTとCSC 広範囲を撮影できる広角OCTの登場により、CSCの脈絡膜容積が後極部で極端に厚いことが示され、後極部に特有の形態異常が存在することが考えられます。
Ⅶ.パキコロイドとCSC CSCに見られる脈絡膜の肥厚や血管拡張は、AMDの一部症例とも共通しており、新しい疾患概念であるパキコロイド疾患として分類されることが提唱されています。
おわりに CSCは古くから知られた疾患ですが、近年のイメージング技術の進歩によりその複雑な病態が明らかになりつつあります。今後の治療法の発展が期待されます。
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