網膜上膜(ERM): 概要と更新 Jpn JOphthalmolの最新号に 辻川明隆先生が網膜上膜の総説を書かれています。分かり易いことを前提に此処にサマライズしてみました。詳しく考えて読む方は原典に当たってください。
1. 導入
- ERMとは: 老化に伴い発症する黄斑疾患で、網膜に線維性膜が形成され、視力低下や変視症を引き起こす。
- 主な治療法: 外科的切除のみ。
- 課題: 発症メカニズムの未解明や手術適応基準の不確定。
2. 病態
- 形成のメカニズム:
- ミュラー細胞の移動: 硝子体剥離により網膜表面に移動。
- 硝子体皮質の残存: 硝子体の崩壊や牽引によるERM形成。
- ERMの構成要素: コラーゲンや収縮性タンパク質を含む膜が形成され、網膜牽引を引き起こす。
3. 診断と画像解析
- 診断法: 眼底検査とOCTが有用。
- OCTの特徴:
- ERMは網膜表面の高反射線として観察。
- 網膜ひだや中心窩の異常が進行例で確認可能。
- En face画像で網膜全体を3次元的に評価。
4. 視覚機能障害の病理
- 障害の原因:
- 視細胞の異常: 視細胞の牽引や変位。
- 網膜内層の損傷: 内核層のダメージ。
- ミュラー細胞の光誘導機能の変化: 網膜牽引が光誘導を乱す。
5. ERMの治療
- 手術効果: 視力や変視症スコアの改善が報告されているが、完全な回復は難しい。
- 手術基準:
- 視力だけでなく、変視症(M-CHARTSスコア0.5以上)を評価基準に含める。
- OCTを用いた網膜襞の深さ(MDRF)の評価も有用。
6. ERM手術の論争
- ILM剥離の是非:
- メリット: ERMの完全除去と再発リスクの低減。
- デメリット: 網膜損傷や染色による毒性リスク。
- 結論: 患者の状態に応じた慎重な判断が必要。
7. ERMに似た網膜前組織: 網膜上増殖
- LMHとLHEP:
- LMH(層状黄斑円孔)に関連する網膜前組織としてLHEP(ラメラホール関連網膜上増殖)が特定。
- ミュラー細胞が主成分で、牽引力は少ない。
- 診断基準: LMH、ERM中心閉裂症、黄斑偽円孔(MPH)のOCT基準を詳細化。
8. LMHと関連疾患の治療
- LMH治療の課題: 網膜牽引がないため、膜除去が必ずしも効果的ではない。
- 新技術: 網膜上増殖を中心窩に埋め込むことで形態改善と視覚回復が期待されるが、長期的な有効性は不明。
9. 結論と今後の課題
- 研究の方向性: ERMと関連疾患の病因、手術適応基準、最適な技術の解明が必要。
- 重要性: 正確な診断と個別化された治療が視覚機能の改善に貢献する。
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