糖尿病網膜症・加齢黄斑変性・網膜疾患

[No.432] 網膜に広範な出血をきたす網膜中心静脈閉塞症とは:

網膜中心静脈閉塞症とは、::
 眼球の内側にあって光を感じる組織が網膜。ここには動脈と静脈が走っていて、このうちの静脈が詰まって起きるのが網膜静脈閉塞症です。これは高血圧や動脈硬化などのいろいろな素因でおきますが、網膜静脈全体が詰まれば、網膜中心静脈閉塞症であり、一部分が詰まれば網膜静脈分枝閉塞ということになります。


 ではここでは網膜中心静脈閉塞症の症状をおさらいします。
先ずみられる症状は急激な視力低下。網膜全体の血液の出口がふさがれるので、網膜は刷毛で色を置いたような出血が眼底のほぼ全体を包みます。網膜の循環がさえぎられれば、網膜の中心部分である黄斑にむくみ(浮腫)も来ますので、視力も低下するでしょう。


あらかじめ、出血が少なく血管が詰まりかけたような様相を呈し、検診などで指摘されることもありますが、一般にその視力低下は突然に生じ、しばらく待ってみても視力は改善しがたいです。

 同時に自覚するのが視野障害です。網膜の循環障害で光を感ずる網膜の機能が落ちますので、視野は中心に向かって狭窄します。

 網膜の変化を反映して物がゆがんで見えるという変視症をきたすこともあります。また、血管は詰まっていて網膜には出血があっても、案外本人が異常を訴えない場合もあります。

原因としては、高血圧や動脈硬化が挙げられています。動脈と静脈が重なる部分で動脈がその存在を主張すると其処で交叉する静脈のほうが血圧は小さいので押しつぶされて静脈閉塞が起きるという考えもあります。

この網膜出血をしばらく放っておくと、虚血にさらされた網膜は血管新生因子という化学物質を産生します。その影響で網膜には新生血管という弱い血管が数カ月から数年で増殖してきます。それが破綻して起きるのが硝子体出血です。これは眼内にあるゼリー状の硝子体(しょうしたい)の中に出血がおきるもので、突然光が通らなくなりますので、まったく見えなくなります。それに対して行われるのが硝子体切除手術です。眼内の出血を除去し、血液循環の悪い網膜全体にレーザー光凝固をおきます。

 この疾患にみられるもう一つの重篤な合併症が血管新生緑内障です。先に述べた血管新生因子が眼球の前のほうに働くと治療が大変困難な特殊な緑内障、すなわち血管新生緑内障が発生します。眼圧の上昇は普通の緑内障よりもつよく、そのコントロールにも難渋します。

 この網膜中心静脈閉塞症の患者さんが来院されますと、病変の範囲、部位、血管閉塞の程度を知るために眼底検査の他に蛍光眼底造影検査を行います。(この検査には造影剤の静脈注射が必要であり、それで患者さんの具合が悪くなる場合もあるので検査をよく説明してからに、慎重に行います。)

また、黄斑のむくみを観察するためには安全な光干渉断層計OCTによる検査も有用です。

治療には先ず網膜光凝固の適応を考えます。専門的には動脈も同時に冒されて網膜に強い虚血を伴う虚血型と網膜に出血していても動脈自体が詰まってはいない非虚血型の網膜血管閉塞症を分けています。網膜光凝固というレーザー光線での網膜光凝固が勧められるのはこれらのうちの虚血型のものです。非虚血型に対しては、むやみにレーザー光凝固は行われません。

 このレーザー治療は、緑内障や硝子体出血などの合併症を予防あるいは治療するために行うことがあります。また、黄斑のむくみの治療として行うこともあります。

 最近注目されているのが、眼球周囲ないし眼内への注射です。黄斑のむくみの治療のために眼球に種々の薬剤を注射することがあります。注射する薬剤は、副腎皮質ホルモンや血管内皮増殖因子に対する人工の抗体というむくみや新生血管を抑制する効果のある薬剤などです。この抗体は値段も高くて保険適応にも制限がありますので、個別には主治医にご相談ください。

 そして最終手段としての手術があります。これには、単に黄斑のむくみを取る目的で行う場合と硝子体出血の除去と虚血に陥った網膜の削減などを治療する光凝固を併用して行う場合があります。

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