糖尿病網膜症・加齢黄斑変性・網膜疾患

[No.465] CAR 癌関連網膜症 Cancer associated retinopathy

Cancer associated retinopathy、CAR、癌関連網膜症: 今日のウイルズ眼科病院の網膜カンファレンスでは、両眼の視力低下を示した50歳台女性の症例が検討されました。矯正視力は20/200程度。眼底のFAGでは網膜血管の強い充盈遅延があったが、血管からのリークはなく、OCTでは網外層の構造の乱れが強かった。視野は強い求心性狭窄で、ERGではロッドとコーン両方の機能不全。話はここでCARに進み、抗リカバリン抗体陽性で診断は確定。本人は2年前に子宮体癌を診断されていた。テノン下ステロイド注射や、血漿交換、全身ステロイド投与、そしてリツキシマブが用いられた。一時視力は20/40程度まで戻ったが、効果は一時的で数か月後には光覚弁に下がり、その後の経過は追えなかったらしい。

この症例は、CARの特徴を備えているらしい。示されたスライドでCARの特徴を拾うと、癌に関連した抗体は小細胞肺癌、乳癌、子宮体癌、子宮頸癌にみられる。症状は進行性視力障害、輪状暗点、羞明、夜盲、ERG異常。抗リカバリン抗体(この症状はがん診断4年前から診断後10年でもる)、抗エノラーゼ抗体(これは癌診断後に資格症状が出る)、抗CAII抗体、抗トランスヂューシン抗体がある。

この講演の中で紹介されたキーになる参考文献は次の通り。

婦人科癌を伴う癌関連網膜症における抗網膜自己抗体の重要性:というもので、その要旨を抜粋すると、

Grazyna Adamusetal  。 J ClinExpOphthalmol  2013年

背景: 自己抗体(AAbs)の存在は、自己免疫の主要な血清学的指標です。癌関連網膜症(CAR)は、AAbおよびさまざまな種類の癌に関連しています。この研究の目的は、腫瘍随伴性の視覚的症状がある場合とない場合の婦人科がんの女性における血清自己抗体のプロファイルを調べることでした。

方法: 子宮内膜、頸部、卵巣、およびファロピウス管を含む、CARおよび婦人科腫瘍の症状を有する46人の女性、CARの症状を伴わない同様の腫瘍を有する111人の女性、および60人の年齢を一致させた健康な対照のコホートの遡及的研究。血清AAbの存在と標的抗原の同一性はウエスタンブロッティングによって実行され、それらの重要性はフィッシャーの直接確率検定を使用して評価されました。

結果: 婦人科CARの患者は、血清陽性の割合が最も高く(80%)、次にCARのない婦人科がん患者(61%)および健常対照者(58%)が続きました。認識頻度の違いは17の抗原で見られ、5つの網膜抗原が頻繁に標的にされました:エノラーゼ、アルドラーゼC、炭酸脱水酵素II、リカバリン、GAPDH。抗解糖系酵素の発生は、健康な対照よりもCARおよび癌患者で2〜3倍の頻繁でした。抗レカバリンAAbは子宮内膜CARで多かった。抗CAII抗体は、女性のグループ間で有意差はありませんでした。このコホートでは、網膜症の発症前に癌と診断され、潜伏期間は2か月から30年でした。

結論: 婦人科CARの新しい網膜標的が特定されました。各婦人科CARには、非CARプロファイルとは異なる独自の自己抗体プロファイルがあります。これは、複雑な自己抗体信号が、単一のAAbよりも診断に予測可能であることを意味します。特定の抗網膜AAbは、CARの女性に最も多く見られましたが、それらのプロファイルは癌対照と完全に区別されてはいませんでした。

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使われる治療法には、①テノン嚢内ケナログ。②経口プレドニン60mg、③血清交換、④リツキシマブ

ちなみに、リツキシマブはB 細胞表面の CD20 抗原に結合して,補体依存性細胞傷害作用あるいは抗体依存性細胞介在性細胞傷害作用により,B 細胞を特異的に傷害する、とのことでした。 (完)

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アイキャッチ画像は、https://imagebank.asrs.org/file/28365/cancer-associated-retinopathy-car

 

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