糖尿病網膜症・加齢黄斑変性・網膜疾患

[No.1307] 糖尿病性黄斑症とは:(井上真教授)

清澤のコメント:12月25日(日)、杏林大学医学部 眼科学 井上真教授が、ニッポン放送のラジオ特別番組「第48回ラジオ・チャリティ・ミュージックソン」にゲスト出演し、糖尿病に関連して発症する可能性のある目の病気「糖尿病黄斑浮腫」について説明した。このお話の要点を採録し、追加の私の記事もリンクしておこう:

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見えにくいのは疲れや加齢のせいではない可能性が!早期発見が何より大事な「糖尿病黄斑浮腫」とは

2022年12月25日(日)09:00

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「糖尿病黄斑浮腫」とはどんな病気なのか?

「糖尿病黄斑浮腫」とは、糖尿病で血糖値の高い状態が続いた場合に発症する病気の1つです。私たちの眼の奥には「網膜」という薄い膜があり、ここで視覚の情報を認識しています。この網膜の中心部には「黄斑」と呼ばれ、ものの形や色、大きさなどを見分ける、特に視力に重要な部分があるんです。糖尿病によって、この「黄斑」が障害されると、ものがかすんで見えたり、ゆがんで見えたりするようになります。これが「糖尿病黄斑浮腫」という病気です。

実は、密接に関係していた目の網膜と糖尿病

糖尿病によって高血糖の状態が続くと、血管が傷ついたり、詰まったりして、その血管につながる臓器が障害され、合併症を引き起こす原因になります。私たちの眼の奥にある「網膜」には多くの血管があり、眼の細胞に栄養や酸素を運んでいます。糖尿病によって、これらの血管が障害されると、糖尿病の3大合併症の一つである、「糖尿病網膜症」を発症します。「糖尿病黄斑浮腫」はこの糖尿病網膜症に伴って生じます。

正常な網膜では、血管から血液や血液成分が漏れ出ることはありません。しかし、糖尿病によって高血糖が続くと、これらの網膜の血管がもろくなったり、詰まったりして、血管の外に血液成分が漏れ出したり、出血したりしてしまいます。その結果、黄斑にむくみが生じるのが「糖尿病黄斑浮腫」です。黄斑は、ものの形や色、大きさなどを見分ける働きをしているため、この部分が障害されると、眼のかすみやゆがみが生じたり、視力の低下を引き起こしたりするんです。
「糖尿病黄斑浮腫」は糖尿病になると誰もが発症してしまう病気なのか?

最近の調査では、糖尿病が強く疑われる方のうち、糖尿病網膜症は3人に1人、糖尿病黄斑浮腫は15人に1人が発症していると推計されています。糖尿病網膜症になると、初期でも末期でも、どの段階からも糖尿病黄斑浮腫を発症する可能性があるといわれています。

 

もしも、糖尿病黄斑浮腫を発症してしまった場合、治すことはできるのか?

完治するのは難しい病気ですが、症状の進行を抑えて、視力を維持するための治療法はあります。まず基本となるのは、「血糖」のコントロールです。糖尿病のかかりつけの先生の指示に従って、きちんと糖尿病の治療を続けましょう。そのうえでできる糖尿病黄斑浮腫に対する眼の治療としては、病気の原因物質であるVEGFというタンパク質の働きを抑える抗VEGF薬という眼の局所への注射が中心となっています。抗VEGF薬は現在4種類あり、患者さんに合わせて使用されています。

そのほかにも、レーザー光凝固術という、レーザー光を照射して異常な血管を凝固させる治療、網膜の表面に膜が張って網膜が引っ張られて黄斑浮腫を起こしている場合に硝子体と膜組織を切除する硝子体手術があります。数十年前はレーザー光を照射する方法しかありませんでしたが、最近は新しい治療の選択肢が増えてきているんです。

主な治療方法は、眼への注射。痛みはないのか?

治療の前には痛みを和らげるために局所麻酔を行います。注射針が入る感覚や眼が押される感じは残るようです。むしろ注射前の消毒がしみるという方もなかにはいらっしゃるようです。

糖尿病網膜症や糖尿病黄斑浮腫、気付きのきっかけとなる症状は?

糖尿病黄斑浮腫では、眼がかすむ、ものがゆがんで見えるなどの見え方の変化があらわれます。「見たいもの」が見えにくくなり、「人の顔が認識しにくい」、「電車の路線図が見えない」、「切符を改札機に入れられない」、「見えないことを周囲に分かってもらえない」など日常生活にさまざまな影響を及ぼします。症状が出ていない方の眼が、見え方を補うため自覚しにくく、症状が見過ごされてしまうことも多いです。

また、糖尿病黄斑浮腫の前段階である糖尿病網膜症では、初期や中期には無症状の場合がほとんどなので、注意が必要です。こうした病気による視力低下や進行を防ぐためには、早期発見が大切です。糖尿病の方は、症状が無くても少なくとも半年か年に1回は眼科で網膜の検査を受けていただきたいですね。

とにかく早期発見が大切。定期受診以外にできることは?

視覚は、人が五感から受け取る情報の8割以上を占めると言われていますし、眼の働きを維持することはとても大切ですね。糖尿病黄斑浮腫が進行して、視覚を損なうことは決して稀なことではありません。糖尿病網膜症は、日本における中途視覚障がいの原因の第3に挙げられています。早期発見がとても大切です。ものがゆがんで見える症状の簡単な自己チェックとして、「アムスラーチャート」とよばれる碁盤のようなマス目のシートを使う方法があります。眼鏡やコンタクトをしたまま片眼でシートを見たときに、マス目がぼやけたり、ゆがんで見えたり、見え方がおかしいと感じたりした場合には、眼科を受診してください。また、一度のチェックで異常がない場合も、糖尿病の方は定期的にチェックを行うことをおすすめしています。

2022年12月25日(日)09:00

 

低下した視力を元に戻すことは難しいです。眼がかすむ、ものがゆがんで見えるなど、見え方がおかしいと感じる方は、すぐに眼科を受診してください。そして、特に自覚症状がなくても、糖尿病の方は定期的に眼科を受診して、網膜の検査を受けることをおすすめします。ぜひ、病気が進行する前に早期診断・早期治療を行い、手遅れになる前に視力を維持していきましょう。(杏林大学医学部 眼科学教授 井上真)

記事監修:中外製薬株式会社

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関連記事:日刊ゲンダイに今年投稿した似た内容の私の記事です。

https://hc.nikkan-gendai.com/articles/277709

眼科編(14) 糖尿病網膜症(1)日本の糖尿病患者の15%が患う目の病気

 

https://hc.nikkan-gendai.com/articles/277739

糖尿病網膜症(2)治療法はレーザーや手術から注射へ   60歳からの健康術 15

 

 

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