三河雑兵心得:豊臣仁義(井原忠正著)が6月15日に第1刷発行され、書店店頭に出ていたので早速購入して読みました。足軽仁義から始まり、14冊目です。「この時代小説がすごい」2022年版で第1位を獲得した作品群です。この作家には「うつけ屋敷の旗本大家」など、もっとコミカルな作品群もありましたが、私は真面目に主人公を描くこの三河雑兵心得シリーズの方が好きです。
今回、主人公の植田茂兵衛は家康の命で鉄砲隊100人を連れて、小田原城主で危篤の大久保忠世(七郎右衛門)の見舞いに派遣されます。その途中の箱根山中で、北条氏の遺臣である風魔小太郎らの山賊に襲われて銃30丁を奪われるという損害を出してしまいます。大久保彦左衛門と共に鉄砲を取り返し、山賊征伐をするという場面で、茂兵衛の視力低下が描かれています。(99ページ)
「煙はどのあたりから上がっているんだ?」 「千穀原の北というか……向かって左側です。あ、少しだけど、今も上がっていますね」と彼方を指さした。 「え?」指し示す方を真剣に凝視したのだが、やはり見えない。 「うん、よく見た。確かに五、六筋だわ」と茂兵衛が眼を擦りながら頷いた。本当は見えていないのだが、二人の若者が言うのだから間違いなかろう。ここで、お頭が加齢により視力を落としたことを配下に開示する必要はない。むしろこれから始まる小戦に悪影響をもたらしかねない。 (嫌だなあ。目、歯、まらの順で衰えるそうだが、いよいよ目に来たかァ。次は歯か?そして最後は……ま、参ったなァ。)
この描写から、本人には自覚のないうちに両眼の視力が緩徐に低下している様子が伺えます。いかにも加齢性白内障のような症状です。昨年の医学部の同級会で、眼科医の岡部仁君が白内障についてのスピーチで「目、歯、まらの順で衰える」という話を挟んでいましたが、その話がここでも出てきました。
調べてみましたが、「目、歯、まら(男性性機能)の順で衰える」というフレーズは、日本の格言やことわざの一つで、一般的な口伝や民間の知識として広く知られています。具体的な出典は特定できませんが、古くからの経験や観察に基づいた生活の知恵として一般的に使われている表現です。特定の書籍や文献に由来するものではなく、日常会話や地域の知識として広まっているものと考えられます。
この格言は、年齢とともに視力が衰え、その次に歯の健康が損なわれ、最後に全身の健康が影響を受けるという一般的な観察に基づいています。
目の衰え:
- 原因: 老眼(加齢による近距離視力の低下)、白内障、緑内障、黄斑変性症など
- 予防・対策: 定期的な眼科検診、適切な眼鏡やコンタクトレンズの使用、バランスの取れた食事、適度な休憩
歯の衰え:
- 原因: 歯周病、虫歯、歯の摩耗、歯茎の後退など
- 予防・対策: 定期的な歯科検診、正しい歯磨きとフロスの習慣、バランスの取れた食事、禁煙
体の衰え(男性性機能):
- 原因: 筋肉量の減少、骨密度の低下、慢性疾患の進行など
- 予防・対策: 定期的な運動、バランスの取れた食事、ストレス管理、定期的な健康チェック
このように、目と歯の健康を保つことは、全身の健康維持にもつながるため、早期からの予防が重要です
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