眼瞼痙攣

[No.4490] 光過敏の現在の理解:目から大脳皮質まで(清澤の講演要旨と動画)

光過敏の現在の理解:「眼瞼痙攣における眩しさとは何か」という眼瞼痙攣・片側顔面痙攣友の会における清澤の講演ビデオです。文章の後に動画が張ってあります。

要点は:

本日は「眼瞼痙攣における眩しさとは何か」というテーマでお話しした内容をまとめます。私は江東区で開業後、自由が丘(目黒区)へ移転して4年になります。72歳となった現在も診療を続けていますが、今回は眩しさ(羞明)という症状について、最近の研究を踏まえながら整理してみました。

まず重要な点は、「眩しさ」は単に光に弱いという単純な現象ではないということです。従来、光は網膜の視細胞(杆体・錐体)で受容され、その信号が視神経を通り、視床を経て大脳視覚野に伝わると理解されてきました。しかし近年、眩しさにはこれとは異なる経路が関与していることがわかってきました。

網膜の最内層には、メラノプシンを含む特殊な神経節細胞(ipRGC)が存在します。この細胞は特に青色光に敏感で、明るさや生体リズムの調整に関与するだけでなく、羞明の発生にも関係していると考えられています。つまり、眩しさは通常の「見る」経路だけでなく、別の光受容システムを通じて脳へ伝わる可能性があるのです。

さらに重要なのは、光刺激が視床などの中枢を経由する過程で、痛みや不快感に関連する回路と結びつく点です。2020年前後の研究では、青色光刺激が視床の特定領域を活性化し、それが痛み関連回路に影響を及ぼすことが示唆されています。つまり「眩しい」という感覚は、単なる視覚情報ではなく、「痛み」に近い不快な感覚として脳で処理されている可能性があるのです。

また、脳は固定された構造ではなく、神経ネットワークの結びつきが強くなったり弱くなったりします。眼瞼痙攣では、視床や基底核を含む「皮質–基底核ネットワーク」の機能的なバランス異常が指摘されています。これは脳梗塞のように明確な破壊があるわけではなく、微妙な興奮と抑制のバランスの乱れです。こうしたネットワーク異常が、眩しさ(感覚異常)と瞬きの制御異常(運動症状)の両方を生み出していると考えられています。

ドライアイの研究でも示されているように、目の表面の小さな傷だけで羞明が起こるわけではありません。慢性的な刺激が続くと、脳側で「感作(sensitization)」が起こり、弱い光でも強い不快感を感じるようになります。これは中枢性感作と呼ばれ、慢性疼痛のメカニズムと類似しています。つまり、目の問題だけでなく、脳の反応性の変化が重要なのです。

ボツリヌス毒素治療についても、新しい知見があります。従来は眼輪筋の過剰収縮を抑える目的で行われてきましたが、近年の研究では、顔面へのボツリヌス毒素投与が脳内の痛み関連活動を低下させる可能性が報告されています。つまり、末梢(顔面)への治療が中枢(脳)の活動に影響し、羞明そのものを軽減している可能性があるのです。

さらに最近のMRI研究では、眼瞼痙攣の重症度と視床の構造変化が関連するという報告もあります。症状が長期化・重症化すると、視床の体積が減少する可能性が示唆されており、慢性のネットワーク異常が構造的変化にまで及ぶことが考えられています。

まとめますと、眼瞼痙攣における眩しさは、

  1. 網膜の特殊な光受容細胞から始まり

  2. 視床を中心とした中枢回路で過剰処理され

  3. 運動回路を刺激して瞬きや痙攣を引き起こし

  4. さらに精神症状(不安・抑うつ)とも関連する

という、目と脳の両方にまたがる現象です。

したがって治療も、目の表面のケアや遮光だけでなく、ボツリヌス治療や中枢機能を意識した包括的対応が重要になります。眩しさは単なる「光に弱い」という問題ではなく、感覚・運動・精神の三要素が絡み合った脳のネットワーク現象なのです。

以上が、現在の医学的理解の概要です。

 

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