神経眼科誌(40-3)特集神経変性疾患の眼球運動異常。臨床神経眼科医としては日常から興味を持つ部分であるが、それを通読する機会は多くない。原典に戻って読んでいただくと更に良いのだが、この機会に特集全体を読み通した私のノートとして眺めてください:
序論;城倉 健、中馬越 清隆:脳の病変の広がりが異なる4種類の神経変性疾患を取り上げ障害される脳の部位と対応する臨床像、および眼球運動異常について解説する。通読するとほぼすべての変性疾患に共通してみられる眼球運動異常がある一方で、相対的な障害程度や最も目立つ障害が疾患ごとに子tなり、脳病理と関連している。
アルツハイマ―病(中馬越 清隆):(要約の抄出)海馬を含む大脳症状: 眼球運動異常や律動性眼球運動混入(sacchadic intrusion)、前庭機能障害。認知症では眼球運動や前庭異常がバランス障害に繋がる。アルツハイマー病ではsaccadeとpersuitの異常や、前庭機能障害も高率に合併する。更に律動性眼球運動混入を合併する。(下の自著論文は眼球運動には触れていません。)
パーキンソン病(寺尾 安生):黒質を含む基底核病変:(要約の抄出)パーキンソン病で特徴的にみられる眼球運動症状には衝動性追従、振幅過小、矩形波眼球運動、固視の障害などがある。他のパーキンソン症候群に比べて眼球運動異状は比較的軽い。サッケードの最終共通経路となっている上丘の機能が大脳基底核により抑制され、振幅過小とサッカード戦時の延長を認める。此の抑制が時に解除されると逆にサッケード抑制が解除されサッケード抑制が外れる。パーキンソン病ではサッケード異常をを調べることが有用。
脊髄小脳変性症(小出真悟ほか):脊髄小脳変性症(SCD)の主な病変は小脳と脳幹。遺伝性と孤発性に分けられ、多くの疾患を含み、臨床的特徴も異なる。小脳と脳幹は眼球運動の各要素である衝動性眼球運動、滑動性追従眼球運動、前庭眼反射、視運動性眼運動、輻輳、固視に関る部位。SCDでは眼球運動障害の頻度が高く、この概念に含まれる疾患ごとに特徴的な眼球運動障害も認められる。(詳細は略)
進行性核上麻痺:工藤洋祐:(中脳被蓋病変);進行性核上麻痺(PSP)は古典的に易転倒性、垂直性核上性眼球運動障害、体幹中心の筋強直、無動、認知機能障害を来す神経変性疾患。病初期より垂直性の衝動性眼球運動の戦時延長や最大速度、振幅低下が検出される。スクエア・ウウェーブ・ジャークスも多い。進行に伴って水平性サッケードや追従性眼球運動も障害される。前庭眼反射は比較的保たれるが、視運動性眼振は、急速相の障害に伴い解発は不良になる。
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