労働団体の連合が集計した今年のボーナスの平均額は73万8017円。まとまった金額を手に使い道に迷っている人も多いのではないか。ならば、年々酷使され続ける「目」に投資してはどうか。とくに老眼が進む中高年サラリーマンは、ピントの合った遠近両用眼鏡を使うことで、長年の肩こりが解消するケースもある。

「遠近両用眼鏡(=老眼鏡)はお年寄りの必需品、使うのは50歳過ぎ……というのは大間違い。すでに20歳過ぎから目の老化は始まっていて、人によっては早い時期に遠近両用眼鏡が必要になるケースがあります。子供の頃から強度近視に悩んでいた作曲家のシューベルトは28歳で遠近両用眼鏡を使い始めたとの話もあります」

 こう言うのは「自由が丘清澤眼科」(東京・目黒区)の清澤源弘院長。老眼は加齢に伴う目の老化現象であり、老眼が始まる年齢は人によって異なる。最近は、スマホやパソコンの長期使用で30代で老眼を自覚するケースも少なくない。

「老眼の原因は老化に伴う目のピント調節機能の衰えです。目の奥にあって、カメラのレンズのような働きをする水晶体は毛様体筋により厚みを変えることで光の屈折率を変えて、網膜にピントが合うよう調整しています。加齢により毛様体筋が弱まり、水晶体が柔軟性を失うと、近くのモノが見えづらくなったり、日暮れになって周囲が暗くなると見えづらくなったりなど、老眼の自覚症状が出るのです」(清澤院長)

 老眼を放置すると、無理に見ようとして眼精疲労が進み、頭痛や吐き気、肩こりといった体調不良が起きる場合もある。無意識にモノを見ようとして無理な姿勢を取り、体を痛めることもある。

「人によっては30代から老眼鏡をかけることで、しつこい頭痛や肩こりが解消されて、楽になった、という患者さんも少なくありません」(清澤院長)

■半年に一度のペースで視力測定

 では、具体的にどんな遠近両用眼鏡を選べばいいの? 大手眼鏡チェーンの㈱パリミキ営業本部スーパーバイザーの野田城太朗氏が言う。

「眼鏡を買うために大事なことは①視力測定が正確にできる環境があり②レンズのバリエーションが豊富で③メガネ作りのプロが在籍する店舗を選ぶことです。いまは、多くの種類のレンズがあります。お客さまの見たい距離を明確に理解したうえで視力を正確に知り、それに対応したレンズを選ぶことができれば、お客さまが望む距離がハッキリ見える、すなわち生活にフィットする快適な眼鏡を作ることが可能です」

 レンズの種類が少ない店ではそもそも顧客の選択の幅が狭いうえ、販売員の知識・情報が乏しい場合がある。もちろん、レンズの種類が多くても視力測定が正確ではなく、眼鏡作りやフィッティング技術を持ち合わせていない店ならば、せっかくのレンズの機能も十分発揮できず、良い眼鏡は生まれない。

 ちなみに同社では数百種類のレンズを扱い、遠近両用の累進レンズも30種類以上ある。国家検定資格の「眼鏡作製技能士」を持つ店員が恐らくは日本最大であろう994人が在籍、独自の瞳孔中心計測アプリ「アイポインター」などもそろっている。

「遠近両用眼鏡用の累進レンズは、上下の度数変化に伴いレンズの厚みが増すため、レンズを薄くする加工を施すのが一般的です。しかし、それだと眼鏡の両端が歪んで見えたり、地面が浮き上がって見えるなど違和感を感じる場合があります。弊社では、それを解決するためプリズムコントロール技術を搭載した累進レンズ(キャスリーBS Light)を使い、初めて遠近両用眼鏡を使った人でもスムーズに使いこなしていただけるようにしています」(野田氏)

 また、中高年になると、光をまぶしいと感じる人も少なくない。遠近両用眼鏡に使う累進レンズに紫外線や可視光線によってレンズの色が段階的に変化する調光レンズを組み合わせることも可能だという。

 いまや100歳以上が9万人を超える超高齢社会。長い人生を楽しく過ごすためには目の健康が欠かせない。「負担なく物事をハッキリ、くっきり見るためには、眼鏡を作るための視力測定を半年に一度くらいのペースで受けることが大切」(野田氏)だという。

 あなたも、この冬、眼鏡店をのぞいてみては?