清澤のコメント:眼精疲労の点眼薬シアノコバラミン(® サンコバ)の色は赤です。そのことに言及した記事が出回っています。:
先ずは論文紹介から:Int Eye Sci、 巻。16、 7号、 2016年7月
映像表示端末による視覚疲労に対するビタミンB12点眼薬の臨床観察
概要:
目的: ビジュアル ディスプレイ端末 (VDT) によって引き起こされる視覚疲労に対するビタミン B12 点眼薬の臨床効果を調査すること。
方法: VDT によって引き起こされた視覚疲労を有する合計 50 人の患者 (100 眼) を、平均して 2 つのグループに分けました。 対照群は生理食塩水で治療し,治療群はビタミンB12点眼薬,1日3回,毎回1滴,60日間連続で治療した。 調節パラメータとシルマーⅠテストを測定し,治療前後に分析した。
結果:治療後,治療群のシルマーⅠ試験,調節振幅および調節機能の結果は,対照群のそれらよりも高かった(すべてP<0.05)。 対照群(P<0.05)。
結論: ビタミン B12 点眼薬は、ドライアイの症状を軽減し、調節機能を改善し、VDT による視覚疲労を治療することができます。
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眼精疲労の「目薬」は赤色と決まっている! 実は「色」で分かる点眼薬の成分と効能はてなブックマーク
2022年11月28日(月)20時45分 All About
薬局で売られている目薬には、鮮やかな色がついているものがあります。着色されているわけではなく、有効成分の色そのものです。
ーーーー頭初の記事引用ーーーー
目薬の色の違いは? 実は色だけでわかる有効成分
疲れ目、充血、目のかゆみ。みなさんもいろいろな症状にあわせて、目薬(点眼薬)を使うことがあると思います。そして、そんな目薬に、赤・黄・青などのきれいな色がついているものが多いのにお気づきでしょうか。
鮮やかな色がついていると、何だかよく効きそうに思えますね。しかし、これらの色がついているのは、売り上げを伸ばそうと見た目をよくしているわけではありません。
薬には、錠剤や顆粒、液剤など、様々な形状がありますが、色は圧倒的に白色または透明のものが多いです。飲み薬の場合は、「飲み忘れを防ぐ」「使用目的が分かるようにする」などの理由で、添加物などを加え、着色しているものもあります。
しかし目薬の場合は、着色目的での添加剤の使用は認められていません。そのため、目薬の色は、そのまま含まれている有効成分の色が現れているのです。
目薬の赤色の元は「ビタミンB12」、黄色は「活性型ビタミンB2(フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム)」、青色は「アズレンスルホン酸ナトリウム」という薬効成分です。しかも、これらの成分の含有量が多いほど、色は濃くなります。
成分表示を確認しなくても、見た目の色で成分やその含量が区別できるというのは、薬局で自分が欲しい目薬を探すのに便利ですね。
今回は、赤色の目薬である「ビタミンB12」の効果について、わかりやすく解説しましょう。
ビタミンB12の目薬の効果は「眼精疲労の改善」
「ビタミンB12」は、水溶性のビタミンB群の一つで、欠乏すると末梢神経障害や悪性貧血が生じることが知られています。
目を使う作業を続けることを原因として、目の疲れや痛みなどの症状に加えて、頭痛や肩こりなどの全身症状も呈するようになる状態を「眼精疲労」と言いますが、ビタミンB12は、眼精疲労を改善する効果が期待され、目薬に添加されています。
ビタミンB12は、分子量約1350の比較的大きな有機化合物で、複雑な立体的構造をしています。その特徴の一つは、中心に金属の「コバルト(Co)」を含んでいることです。
コバルトについた置換基によって4種類あることが知られていますが、目薬に入っているのは、もっぱらコバルトにシアノ基(-CN)が結合した 「シアノコバラミン」です。図にシアノコバラミンの化学構造を示しておくので参考にしてください。
シアノコバラミンは、1948年のほぼ同時期に、英国グラクソ・ラボラトリーズ社のレスター・E・スミスらと米国メルク・アンド・カンパニー社のエドワード・L・リックスらによって発見され、cyano + cobalt + vitamin から cyanocobalaminと名付けられました。
ビタミンB12のトリビア、『ハリー・ポッター』の共通点
ビタミンB12の赤い色は、実は「コバルト」の色を反映しているので、ここで少しコバルトのことをお話しましょう。
コバルトは、原子番号27の元素で、ドイツ語のコーボルト(koboldまたはkobalt)が語源です。
コーボルトは、民話に登場する伝説上の醜い妖精、精霊のことで、16世紀ごろのドイツでは、鉱物の冶金が困難なのはコーボルトが鉱石に魔法を仕掛けたせいだと考えられていたそうです。その鉱石が含んでいた元素にコバルトの名を与えたという説が有力です。
因みにコーボルトは、英語では「ゴブリン」と訳されることもあります。あの人気小説『ハリー・ポッター』に登場する魔法生物「ゴブリン(小鬼)」は、コーボルトをモデルとして考えられたキャラクターです。
コバルトは青のイメージだが、なぜ赤色になるのか
上で筆者は、赤はコバルトの色だと説明しましたが、みなさんの中には「何か変だな」と思われた方もいるでしょう。そう、「コバルトブルー」という言葉があるように、コバルトと言えば青ですよね。
確かに、ケイ酸コバルトを含むガラスはきれいな青色を呈します。ワインの青いボトル等にはたいていコバルトが入っています。アルミン酸コバルトを含む青色の顔料は、コバルトブルーと呼ばれ、油絵具や陶磁器の着色に用いられます。
美しい浜辺を「白い砂浜とコバルトブルーの海」と評するように、コバルトには「青色」のイメージが強いですね。しかし、なぜ目薬中のコバルトは赤いのでしょうか。
実はその答えは、中学生が一番よく知っているかもしれません。
忘れてしまったかもしれませんが、中学校の理科で誰もが「塩化コバルト紙」という試験紙を習ったはずです。例えば、炭酸水素ナトリウムを加熱すると、水と二酸化炭素と炭酸ナトリウムに分解しますが、水が生成したことは塩化コバルト紙が赤色に変わることで確認されます。
無水の塩化コバルトは青色ですが、水を吸収して水和物になると赤色を呈するため、水の存在を判定するのに利用されているのでしたね(思い出してください!)。
因みに、タンスなどの水分を吸収して乾燥させるために使われる乾燥剤シリカゲルにも塩化コバルトが混ぜてあり、使い始めは青色、水を吸収すると赤色に変わって使用期限を知らせてくれます。
つまり、コバルトは、いろいろな他の分子がくっつくと、その状態によって色調が変わる性質があるのです。シアノコバラミンの場合、コバルトにポルフィリン類似のコリン環とヌクレオチドとシアノ基が配位しているために、赤色に見えるというわけです。
次に薬局に行ったときに、赤い色の目薬を見かけたら、「ハリー・ポッターのゴブリンや乾燥剤シリカゲルと関係があるんだよな」などと思い出してもらえると、楽しいかもしれません。
ビタミンB12を含む市販の赤い目薬例
参考までに、薬局で売っている主な目薬で、液体が赤色をしているものをみてみましょう。
・新サンテドウα、サンテPC、サンテボーティエ、サンテドウプラスEアルファ、サンテメディカル12、サンテビオ(参天製薬)
・ロートリセb、Vロートジュニア(ロート製薬)
・ノアールワイド(佐藤製薬) など
これらは、みんなビタミンB12(シアノコバラミン)を含んでいます。眼精疲労の悩みで目薬を探している方は、これらの製品を試してみるのがよいでしょう。
阿部 和穂プロフィール
薬学博士・大学薬学部教授。東京大学薬学部卒業後、同大学院薬学系研究科修士課程修了。東京大学薬学部助手、米国ソーク研究所博士研究員等を経て、現在は武蔵野大学薬学部教授として教鞭をとる。専門である脳科学・医薬分野に関し、新聞・雑誌への寄稿、生涯学習講座や市民大学での講演などを通じ、幅広く情報発信を行っている。
(文:阿部 和穂(脳科学者・医薬研究者))
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