糖尿病網膜症・加齢黄斑変性・網膜疾患

[No.2573] 女子医大眼科の勉強会を聞いてきました

昨日、東京女子医大眼科が行う眼科講演会HOTを聞いてきました。丸子一朗先生がHOT情報というお話をされました。その聞き取りメモです。

◎ VEGF阻害薬の硝子体内注射における抗菌薬点眼の使用。日本網膜硝子体学会では、硝子体注射前後で抗菌薬の点眼は行わないことを推奨するという事d、以下のページに記載があると説明されました。:

  • 抗菌薬点眼の問題点: 抗菌薬点眼は耐性菌の増加につながり、感染性眼内炎の予防においてエビデンスが乏しい。
  • 国内外のガイドライン: 海外のガイドラインでは抗菌薬点眼の常用には十分なエビデンスがなく、日本でも抗菌薬点眼の適応や投与期間に関するコンセンサスが得られていない。
  • 抗菌薬点眼の代替: 注射前の適切な消毒と推奨される手順の遵守が重要であり、通常の患者には抗菌薬点眼が不要とされる。
  • 学会の推奨: 日本網膜硝子体学会は、感染症リスクが高くない患者には抗菌薬点眼を使用しないことを推奨している

これらのポイントは、VEGF阻害薬の硝子体内注射の安全性を高めるための指針となります。抗菌薬点眼の使用を控えることで、耐性菌の問題を減少させ、より効果的な感染予防策を取ることが推奨されています。

◎ アイリーアはAMDとDMEに用いられますがその4倍量のバイアルが発売されたそうです。国民医療費にも患者にも朗報であると。眼科医療費の3分の一が薬剤費で、さらにその3分の一が抗VEGF薬だとのこと。その点でバイオシミラー(ラ二ミズズマブ)の使用が勧められるそうです。

眼科医療におけるバイオシミラーとは?

◎ 新しいAMD治療のガイドラインガイドラインが発表されるそうです。滲出型加齢黄斑変性症が血管新生AMDと変わる方向で準備が進んでいるというような話でした。

◎これからの治験 ①パキコロイド疾患に対して第3層医師主導でPDTを使えるようにする置換が京都大などで始まった。京都大、千葉大、女子医大、および関西医大が行う。②CRAOに対するカルパイン阻害薬SJP-0008の治験が行われるが、条件は発症48時間以内。患者さんが居たら女子医大に連絡いただきたいとのことでした。治験の説明:

網膜中心動脈閉塞症(Central retinal artery occlusion: 以下CRAO)は、網膜中心動脈の閉塞により突然の視力低下を生じる疾患で、網膜神経節細胞が障害されて急速に不可逆的な重度の視力低下を引き起こします。CRAO発症後は不可逆的な視覚障害が進行するため、できるだけ早期に血管の閉塞を解除するとともに、虚血中及び再灌流に伴う網膜神経節細胞の保護が重要です1。しかし、網膜神経節細胞を保護するような治療法や治療薬は確立されていませんでした。一方、カルパイン阻害剤であるSJP-0008は、活性化したカルパインの活性中心に入り酵素活性を選択的かつ可逆的に阻害する作用を有し、モデル動物等の試験で網膜神経節細胞死に対する抑制効果が明らかとなっています。SJP-0008は既に臨床第I相試験を終了しており、安全性・忍容性は良好であったと報告されています。現在、SJP-0008による網膜神経保護治療の臨床開発が進められており、第III相臨床試験においてCRAOを対象に、本薬の有効性と安全性を確認することが目的とされています。この研究は、網膜中心動脈閉塞症の治療に新たな展望をもたらす可能性があります。

カルパインの説明:

**網膜中心動脈閉塞症(CRAO)**は、網膜の動脈が詰まって血液が流れなくなり、網膜にある神経細胞が障害されて急速に不可逆的な重度の視力低下を引き起こす病気です。現在、科学的に効果が認められた治療法は存在せず、発症後早期に神経細胞を保護することが重要と考えられています1カルパインは、動脈が詰まった時や血液の流れが改善した時、網膜神経節細胞内のカルシウム濃度が異常に上昇してタンパク質分解酵素として活性化され、網膜神経節細胞の細胞死を誘導します2。網膜中心動脈閉塞症に対して、世界で初めてカルパイン阻害剤を網膜神経保護薬として使用する医師主導治験が行われています。この治療法の確立により、失明原因第1位の緑内障などのその他の網膜疾患に対する治療への展開が期待されています。

 

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