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[No.104] 憂国の商社マンが明かす「日本、買い負け」の現実 肉も魚も油も豆も中国に流れる:記事紹介です

清澤のコメント:生活必需品の全てを輸入に頼る日本。これが世界的なモノ不足の中で中国に買い負けているという。ひどいインフレが食料分野でも起きかけているのか?神王TVも取り上げた話題の元記事紹介です。

  ーーー記事抄出ーーー

憂国の商社マンが明かす「日本、買い負け」の現実 肉も魚も油も豆も中国に流れる

回転寿司では、最近は寿司よりもケーキやラーメン、デザートなどサイドメニューの充実が目立つ(イメージ)

食パンや菓子パン、豆腐、ポテトチップス、冷凍食品、牛丼など、身近な食品だけでなく、電気代やガソリン代など、他分野にわたって値上げが相次いでいる。新型コロナウイルスの感染拡大による影響が大きいのはもちろんだが、数年前から進行している、貿易における日本の「買い負け」も無視できない。俳人で著作家の日野百草氏が、現役商社マンに買い負けの現実と、それを理解しない日本国内の様子について聞いた。

 * * *
「日本の買い負けは深刻ですよ。いずれ国民生活そのものが立ち行かなくなるかもしれません」

 歴史ある食品専門商社に長く勤めるA氏(40代)にお話を伺う。ーー

「大げさではありません。アメリカも中国も日本なんか相手にしないのが本音です。日本のバイヤーは買いたくても買えない、肉も魚も油も豆も、何もかも需要分を確保できなくなりつつあるんです」

 買い負けは昨日今日に始まったわけではない。水産物などは10年前から日本は円安と中国14億人の需要によって買い負けてきた。それがコロナ禍を経て、いち早く経済を回した中国と出遅れた日本とでさらに顕著になった。

「水産物はもう価格競争から脱落しかけています。日本は元々食用魚介類の自給率は100%だった。いまも60%は維持できています。値は張りますが食卓から消えることはない。ーー」

 彼は「馬鹿げた値段」と口悪く言ったが、理由はその水産物を買いつけるのにどれだけ大変か、本来そんな価値ではない、そんな値段でバラ撒くなという思いからだという。商社はどこも最高益を記録するなど物価高騰の恩恵を受けている。ーー彼の言う通り、それどころではなくなってきているのかもしれない。

中国を上回る金を出せない日本は買い負け続き

「深刻なのが食肉です。とくに牛肉がやばい。報道よりずっと深刻です。アメリカやオーストラリアの食肉工場がフル回転しても日本の分が足りない。昨年までアメリカの肉は安定的に買えた。むしろオーストラリアよりアメリカでした。今年に入って急激に中国がこの日本のルートにも手を突っ込んできた」

 オーストラリアの牛肉は、コロナはもちろん干ばつと森林火災で大打撃を受けたため、日本の商社はアメリカの比重を高めた。元々日本の輸入牛肉は90%以上が米国産と豪州産、アメリカ産牛肉は3月にはその輸入増から日本政府が緊急輸入制限措置、いわゆるセーフガードを発動するほどだったのに半年たらずで一転、買い負ける事態となった。

「中国の食肉輸入は米国産や豪州産より少し肉のランクが落ちる(とされる)ブラジルやアルゼンチンといった南米が中心でしたが、いまやアメリカの牛肉市場にも積極的に介入しています。ただでさえアメリカ国内の食肉需要で高騰してるのにね」

 かつての中国の一般家庭の食肉は豚や鳥が中心、牛肉は昔の日本のように高級品だったが、中国の経済発展と急激な富の増大により牛肉を求めるようになった。それを象徴するかのように中国国内は空前の焼き肉ブームでもある。中国はオーストラリアと一時険悪になったが、それもアメリカ産牛肉に向かうきっかけとなった。

「中国がアルゼンチンの牛肉を買い占めたので、アルゼンチン国内の牛肉が高騰しました。主食ってくらい肉を消費する南米で牛肉が食べられないなんて一大事です。それでも儲かるからとアルゼンチンの食肉業者が中国に売ってしまう。まだ足りないと中国はアメリカ産も買い占める。中国を上回る金を出せない日本は買い負け続けているのです」

 シンプルな話、日本が中国より高い金を出せばこんなことにはならない。出せない日本が中国に負ける。実際、一部では日本も負けじと高級食材を中心に「買い勝ち」もしている。また穀物などは日本の商社のお家芸、世界を牛耳る五大穀物メジャーを相手に善戦している。どの国も必死、なぜならスポーツやゲームのように勝った負けたで済まされない、一人ひとりの生活に直結するどころか国の危機にもなりかねないからだ。

「それだけではありません。日本に食料を運ぶ船も他国、とくに中国に取られてます。取り負けですね」

 細かいことにやかましくて金の安い日本の荷主なんかより、金をたくさんくれる中国ということか。

「それもありますけど他にも事情はあります。海運はルートが重要なんですが、アメリカと中国のルートが一番儲かるからそのルートでばかり運びたがる、日本には寄りたくないし、寄ると割高になるから嫌がるんです。人件費の高騰や原油高もあって効率のいいルートにしたいでしょうからね、もちろん日本の荷主がシブチンなのもありますが」

 商品の買いつけ価格も重要だが、その商品を運ぶことも重要なのに、日本はどうも輸送、こと配送料にお金を払うことを渋る傾向があるような気がする。ーー先の大戦でも日本はこの輸送を軽視した。兵站に向かない日本人、何が原因か知らないが、現状の国内輸送の低賃金とありえない過酷な条件を鑑みても、ロジスティックス軽視は日本の悪しき伝統かもしれない。ーー

資源のない国が買い負けるのは恐ろしいこと

 自分たちの価値の軽視、これが翻って日本安い、日本人安いに繋がった。資源のない日本で付加価値のない「優秀な安物」ばかりを作っても、いずれ相手にされなくなることはわかりきっていたはずだ。相手にされないどころか、ついには食料を売ってもらえなくなりつつある。SFみたいな話だが、まったくもって極論ではない。

「アメリカと中国は喧嘩してるようにみえて(食料の)輸出入では仲良くやってるんです。お互いの必要な食料や資源を売買し合ってる。日本を相手にしてもしょうがないとまでは思ってないでしょうが、二の次であることは確かです。」ーー

「ここまで円が安いと買いつけにも不利で限界があります。通貨の弱さは国の弱さと同じです」ーー

「いくら技術があっても、優秀な人材がいても原料や部品がなくちゃ勝てませんよ。資源のない国が買い負けるってことは恐ろしいことだと思います」

 日本は原油、鉱物資源、天然ガスといった自然資源のほぼすべてを輸入に頼っている。食料自給率も37%(2020年度・農水省)、国産の家畜を食べろと言っても餌となる飼料も75%は輸入に頼っている。金を持っているから売ってもらえたわけで、金のない、円も弱い国が買い負けるということは、本当に恐ろしいことなのかもしれない。

「もちろん中国だけではなくアメリカにも買い負けてます、巨大な米中の枠組みが出来上がりつつあります。日本はもう大国間競争の中にいないんです」

 原油の高騰もまた日本を直撃している。30年間平均賃金の上がらなかった日本がチープジャパンとして、生命線である自然資源、食料、そして新たな資源とも言える半導体を手に入れられなくなりつつある。3000万人が米と水と野菜、少量の魚肉で生きながらえた江戸時代に戻るわけにもいかない。

 買い負けも含め、これから何もかも高くなる日本、高くなるだけでも厳しいのに、もし中国に完全敗北、必要な資源、食料が手に入らなくなったとしたら――。

「貿易って戦争なんですよ。高く買い占めた側が勝者です。でもうまくやれば日本だってまだしのげる。これまで馴染みのない国や文化圏からも、質は落ちるかもしれませんが買いつける方向で動いてます。あくまでしのぐだけ、ですが。こういう危機的な転換期だということを消費者も自覚しなくちゃいけない。100円で何でも揃った時代、それは異常だったんですよ」

 最前線を知る彼の言う通り、我々はいま大変な転換期を迎えているのだろう。もはや日本は太平洋の貿易覇権戦争の主役ではない。買い負けながらもいかに中等先進国として、例えば賢明な台湾のように立ち回るか――これしか国を守る術はない。消費者=国民の意識改革も重要だ。

 日本はもう、そうした中等国として生き残る準備が必要な段階に来ているのかもしれない。

【プロフィール】
日野百草(ひの・ひゃくそう)/本名:上崎洋一。1972年千葉県野田市生まれ。日本ペンクラブ会員。出版社を経てフリーランス。全国俳誌協会賞、日本詩歌句随筆評論協会賞奨励賞(評論部門)受賞。著書『誰も書けなかったパチンコ20兆円の闇』(宝島社・共著)、『ルポ 京アニを燃やした男』(第三書館)他。近著『評伝 赤城さかえ 楸邨、波郷、兜太から愛された魂の俳人』(コールサック社)。

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