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[No.1456] 高橋政代先生は「先進医療・選定医療の有用性」を説明しました。

日本の眼科の2月号のわかりやすい臨床講座で、高橋政代先生は「先進医療・選定医療の有用性」を話している。前半では1:保険外併用診療の仕組み、Ⅱ:先進医療、Ⅲ:患者申し出療養を述べているが、注目されるのはⅣの:日本の医療の課題とその他の保険外診療の部分である。その部分を抄出して採録する。

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1980年代日本の医療はWHOにより、アクセス、質、低価格の3つをバランス良く実現し、世界最高の医療と評されたしかしそれは、その当時既に日本の医療者の犠牲的精神が支えていた。時代が進み、2000年代には3つそれぞれが巨大になり、すべてを満たす事が出来なくなったにも関わらず医療制度は変えられなかった。世界各国は3つのうちのどれかを犠牲にすることで医療を維持している。イギリスでは、、アクセスを制限している。アメリカではもとより低価格は目指しておらず医療産業が大きな市場となり、世界の最先端の医療を集めている。一方、日本はアクセスと低価格を維持しており、その代わりに(日本で診療しているだけでは気づかないが)質が低下している

 世界では医療産業は年間30%の成長産業であり、特にアメリカでは通常の診療が数百万円、がん治療は数千万円、複雑な治療は数億円である。アメリカに限らず最近の先進的医療は数千万円が普通である。一方で日本は医療費を抑制しており、新規の治療に製薬企業が求める保険点数が付かないこともあり、最近は新規医療の治験を日本の製薬会社でも日本でなかなか行わない傾向がある。その結果、この10年で世界で承認された新規治療のうち70%が日本に入ってきておらず、さらにそのうちの70%は日本での治験が予定されていない。世界で治る患者が日本では治らないという状態が出てきている。

 また、もう一つの質低下は医療現場である一律な保険点数により、難症例を扱う病院が赤字となり、医療者の勤務体制も厳しくなる。社会主義的価格で資本主義経営を求められる捩じれにより、楽な医療現場へと医師も流れ、中核病院や大学病院などで医療を支える医師が極端に減っており、高齢の医師が引退した後の医療がきぐされる状態である。これからは過去の幻影に縛られて、崩壊している医療体制を変革してこなかった結果であると考えるが、ここにさらに高額となる再生医療を、特に眼科のように適応症例が多くある分野で取り込むと、通常診療の保険点数が減額されたり、治療を行う病院がさらなる赤字になる恐れが高く更に悪循環となる。このような先進的医療をどのように持続可能な医療として組み込むか、その一つの解決策は保険外診療の仕組みを利用することである。

課題は1)高度な医療を行う病院程赤字となる。2)治療費が低額のため、先進医療が入ってこない、企業が維持できない。この2つを解決する方法は自由診療の仕組みである。、、、現在の自由診療の問題は効能効果がはっきりしていない治療が多く、さらにデータの蓄積がなく、、、エビデンスのないままに患者負担を強い続けることである。

 このような従来の自由診療と区別するために、先進医療のような「民間保険特約型高度医療」を進めることで、公的保険とは別の先進高度医療用の財源が確保され課題を可決する可能性がある。、、、日本が世界をリードする再生医療が突破口となり、日本の医療の課題を解決する方法ではないかと考え、現在、各学会、省庁、学術会議などと連携してこの可能性を探っている。

終わりに:「民間保険特約型高度医療」構想を提唱。

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