ドライアイは涙不足だけでなく「油分不足」も原因 マスクから漏れる息でも乾燥を促す〈AERA〉11/10(水) 8:00配信
清澤のコメント:ドライアイがマスクの側面から話題になっています。マスクの使用がドライアイを増強させるということに関しては私も初期から言及していましたが、「https://www.kiyosawa.or.jp/contact-lens-glasses/64465.html/」今回のアエラの記事でもその話が出てきました。今回は、杏林大学医学部眼科学の山田昌和教授、東邦大学医療センター大森病院眼科の堀裕一教授、伊藤医院副院長の有田玲子医師、南青山アイクリニック東京の戸田郁子院長、順天堂大学大学院医学研究科眼科学の猪俣武範准教授とオールスター登場の記事になっています。
https://www.kiyosawa.or.jp/contact-lens-glasses/64465.html/
―――記事引用――――、
パソコンやスマホ、テレビ、車の運転など私たちは日々、目を酷使している。コロナ禍で目にかかる負担はさらに大きくなった(撮影/写真部・張溢文)
コロナ禍で目のトラブルが急増している。ステイホームでスマホやパソコンを使う時間が長くなり、ドライアイの悪化する人が増えている。ドライアイとうつ症状悪化の研究結果もある。ドライアイは放置せず、原因や対策を知り、しっかりとケアしたい。AERA 2021年11月15日号は「目が大事」特集。
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「点眼薬が手放せなくなっていて、我ながら怖い」 健康食品メーカーに勤務する30代女性はこう話す。新型コロナウイルスの感染拡大で昨年4月以来リモートワークが主となり、パソコンのモニターに向かう時間が飛躍的に増えた。眼精疲労がひどく、目がしょぼしょぼするので、1時間に何度も点眼薬に手が伸びる。「キターッ!」と感じる爽快感のあるものがお気に入りだが、すっきりしたと感じるのはほんの一瞬で、またすぐ目がしょぼしょぼする。 「点眼薬の差しすぎが、かえって目の不調を招いているかもしれません」 こう指摘するのは、杏林大学医学部眼科学の山田昌和教授。山田教授が監修した、20~60代男女638人を対象にした「コロナ禍の点眼薬使用実態調査」(「現代人の角膜ケア研究室」が3月に実施)によると、点眼薬の使用者の5割近くがコロナ禍で点眼薬を差す回数が増えていた。
■点眼薬もストレスに また、全体の26%が症状がひどいときは適正回数の限度6回より多く差し、数の上限にこだわらず症状を感じる度に差していると答えた人は約49%。1日20回以上という人もいた。 「点眼薬は差せば、差すほど良いわけではありません。点眼薬1滴は涙の5倍の量があり、何度も使うと目に大きなストレスになります」(山田教授) 点眼薬で涙が洗い流されて涙の油膜層が破壊され、目の角膜が傷つきやすくなる。また、多くの点眼薬には防腐剤が含まれている。防腐剤は品質保持のために必要だが、角膜に傷がついている人には、適正使用回数でも傷を悪化させる恐れがある。 「私がお勧めしているのは、朝起きてすぐ、昼食後、15時、夕食後に点眼薬を各1滴。それ以外にリフレッシュのために1~2滴差す。目がひんやりするタイプのものは角膜への刺激が強めなので、日常使いではなく、すっきりしたい時だけに限定して使う」(同) 点眼薬をむやみに差す前に、そもそもなぜ何度も差したくなるのかを考えるべきだろう。もし「パソコンやスマホを見る時間が増え、眼精疲労がひどくなった」というなら、原因としてドライアイの悪化が疑われる。東邦大学医療センター大森病院眼科の堀裕一教授が言う。
② 「VDT作業(パソコンなどの作業)に集中すると、通常1分間に20回程度のまばたきの回数が、1分間に5回程度に減少します。目を開けている時間が長くなるので涙の量が少なくなり、目が乾きやすくなります。つまり、ドライアイを起こしやすくなります」 すると、目の表面を覆う角膜がむき出しに近い状態になる。傷つきやすくなり、さまざまな症状が現れる。文字がぼやける、目が常に乾いてしょぼしょぼする、目がかすむ、痛む、ゴロゴロする、寝ても疲れ目が取れない、充血、光が眩しい……などだ。
■マスクでドライアイ さらに堀教授が問題視するのは、マスクによるドライアイだ。吐いた息がマスクの上部から漏れ、目の表面に当たり、目の乾きを促す。 「角膜には自己修復機能がありますが、目の酷使と“マスクドライ”で、修復が追いついていない。また、コロナによる精神疲労は自律神経の一つである交感神経を活性化し、涙の量を少なくすることも研究で明らかになっています」(堀教授) リモートワークによるドライアイ対策としては、仕事の環境を整えることも重要だ。「VDT作業を1時間したら休む」「加湿器を使う」「部屋は明るく、パソコンのモニターは明るくしすぎない」「パソコンは少し見下ろす位置に置き、モニターは目線の真正面に」「エアコンの風が顔や目に直接当たらないようにする」などが有効だ。 2012年以降、ドライアイに対する考え方が大きく変わった。伊藤医院副院長の有田玲子医師が説明する。 「ドライアイの大半は、油分不足が原因であることが論文で発表されたのです」 ドライアイという概念が生まれてから数十年にわたり、原因は「涙の水分不足」とされてきた。しかし、点眼薬などで涙の水分を補う治療をしても、症状がなかなか改善しないケースが少なくなかった。研究が進む中でわかってきたのは、ドライアイは油分不足でも起こるということだった。 「現在、ドライアイは国際的に、涙の水分が足りない『涙液分泌減少型』と、油分が足りず水分を補給してもすぐに蒸発する『涙液蒸発亢進(こうしん)型』の二つに分類されています。構成比としては、ドライアイの14%が涙液分泌減少型、50%が涙液蒸発亢進型。また、全体の36%が水分不足と油分不足の両方である混合型と言われています」(有田医師) 涙は、油層、水層、ムチン層の3層で成り立っている。このうち涙の蒸発を防ぐ役割を担っているのが油層で、ベールのように角膜を守っている。しかし、不完全なまばたき、食生活の偏りなど何らかの原因で油層が不安定になると、油層が本来の役割を担えなくなり、涙が乾きやすくなる。これが、涙液蒸発亢進型だ。
③ 「点眼薬を差しても、数分以内に目の乾きを感じるなら、涙液蒸発亢進型が考えられます」(同)
■セルフケアで油分改善 ドライアイには油分不足が大いに関係していることを考えると、その対策が必須。有田医師によれば、「油分不足は、セルフケアでかなり改善できる」とのこと。提案するのは、まず「まぶたの温め」だ。温めたあずきのアイマスクや、ポリ袋に入れた蒸しタオルなどをまぶたにのせ、1日2回、1回5分以上温める。油層を形成する油はまぶたの裏側にあるマイボーム腺から分泌されるが、まぶたの温めでそれが促される。 もう一つは「まばたきエクササイズ」。2秒目を閉じる→軽くまばたき2回→ギュッと2秒目を閉じる→パッと目を開いてまぶしい目をする→目尻と眉毛の間を上げて「キツネの目」をして閉じようとする。これを3日間以上続けると、徐々に効果が出てくるという。 「まつ毛が汚れているとマイボーム腺に脂が詰まりやすいので、洗顔時にまつ毛を指の腹で優しく洗う。水分と油分を両方増やすDHAやEPA、油分を増やすビタミンD、水分を増やすラクトフェリンといった栄養素を食事から取るのもいいでしょう」(同)
■うつ症状悪化の研究も なにをやっても良くならない……という場合は、より積極的な治療法もある。 南青山アイクリニック東京では国内で行えるほとんどのドライアイの治療が可能。マイボーム腺機能不全を合併したドライアイに対し、「IPL治療」と「リピフロー」という最新治療を行っている。 「IPL治療では、特殊なフラッシュライトを照射し、マイボーム腺を刺激して油の分泌を改善します。リピフローは41~43度の熱をまぶたの裏側から与え、同時に圧力を加えてマッサージを行うので、効率よく油の分泌を促すことができます。二つを組み合わせて行うこともあります」(戸田郁子院長) これらの治療は自由診療なので健康保険の適用とならないが、悩んでいる人は一考の価値がある。というのも、ドライアイは“うつ”にも関係していることを示唆する研究結果が発表されたからだ。 順天堂大学大学院医学研究科眼科学の猪俣武範准教授らは、独自に開発したアプリを用いて大規模臨床検査を実施。ドライアイの自覚症状が悪化すると、うつ症状も悪化傾向を示し、ドライアイの自覚症状が軽症であれば1.62倍、中等度であれば2.39倍、重症の人では3.29倍、抑うつ症状を併発しやすいとの結果が出た。(ライター・羽根田真智) ※AERA 2021年11月15日号
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